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  5. 民法Ⅳa(担保物件)/担 保 物 権 法 ― 荻野 奈緒

民法Ⅳa(担保物件)/担 保 物 権 法 ― 荻野 奈緒

【出題意図】

 今回の問題は、事例問題において、当事者の請求および反論の具体的内容・法律構成を確認したうえで、法的論点を特定し、判例および学説をふまえた規範を導き出し、それを事案にあてはめる力を試すものである。以下に、ポイントとなる事項を指摘しておく。

 両小問とも、XのYに対する請求の根拠は、所有権に基づく返還請求であり(妨害排除請求ではないことに注意)、甲土地の所有権がXにあることは明らかで、Yは丙建物を所有し甲土地を占有している。Yの反論は、法定地上権の成立(甲土地の占有権原)であるが、抵当権設定時に存在していた建物(乙建物)と現存する建物(丙建物)とが異なるため、そのような場合にも法定地上権が成立するかが問題となる。

 判例は、同一の所有者に属する土地と地上建物のうち土地のみに抵当権が設定され、その後その建物が滅失して新建物が再築された場合には(小問(1)はこの場合にあたる)、旧建物を基準とする法定地上権の成立を認めている。抵当権設定の差異に、旧建物の存在を前提とし、旧建物のための法定地上権が成立することを予定して土地の担保価値を算定した抵当権者に附則の不利益を被らせないかどうかがメルクマールとされている。

 これに対し、土地と建物共同抵当権を設定した場合については(小問(2)はこの場合にあたる)、判例は、特段の事情(新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等)がない限り、法定地上権の成立を認めていない。新建物のために法定地上権の成立を認めると、抵当権者は当初は土地全体の価値を把握していたのに、その担保価値が法定地上権の価額相当の価値だけ減少した土地の価値に限定されることになって、不測の不利益を被る結果となるというのがその理由である。共同抵当権の設定を受けた抵当権者は、土地及び建物全体の担保価値を把握しているから抵当権が設定された建物について法定地上権の成立を許容しているが、建物が消滅し建物抵当権が消滅したときは土地について法定地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとするのが当事者の合理的意思だという理解がその前提にある。

 

【講評】

 出題意図とは全く異なる問題について論じる答案も散見されたが(新建物に抵当権が及ぶかを論じるもの、389条の説明に終始するもの、更地に抵当権が設定された後に建物が建築された場合について論じるもの等)、出題意図に沿った解答ができている答案が多かった。

 Xの請求の根拠、Yの反論の内容をふまえて、建物が再築された場合の法定地上権の成否について、判例の立場をふまえつつ、理由を付して論じる必要がある。その際、抵当権者が不測の不利益を被るかどうかが重要なメルクマールとなるが、抵当権者の「予測」や「不利益」の内容について具体的に論じる必要があった。

 小問(1)の土地のみに抵当権が設定されていた場合について、「旧建物を基準とするから法定地上権は成立しない」という記述がみられたが、少なくとも判例の立場を前提とする限り、誤りである(「新建物について法定地上権が成立するが、その内容は旧建物を基準とする」というのが正しい)。また、小問(2)の土地と建物に共同抵当権が設定されていた場合について、「建物が滅失すればその価値は土地に吸収される」という記述がいくつかあったが不正確であろう。

 なお、条文引用ができていない答案、漢字の誤記がある答案(「防害排除」など)、略字やカタカナが多用された答案もあった。そのようなことがないように気をつけてほしい。