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民法Ⅱ(物権)-1 ― 梶山 玉香

【出題意図】 

 試験では、基本的な事項につき、「どれだけ覚えたか」ではなく、「どれだけ正確に理解しているか」を評価します。その基本的な知識を「使いこなせることができるか」まで確認できれば、理想的です。しかし、わずか1枚の答案用紙から、いわゆる「(一夜づけの)丸覚え」と「正確な理解に基づく答え」を区別するのは至難の業です。そこで、例年、設問に工夫し、「知識の吐き出し」ではなく、「知識の利用」が必要な問題をいくつか出すようにしています。最近は、特に、法学部を卒業する人が身につけておくべき能力とは何かを意識し、「条文上の根拠を示す」「条文を正確に読む(条文の趣旨も含めて)」ことができるかどうかを試す問題も出すようにしています。

 なお、この科目は1年生から履修することができ、このクラスは1年生だけが受講していますが、展開科目の1つです。取得した単位は、2年生以上で履修した展開科目の単位と同等の価値を有します。したがって、均衡上「1年生であること」への配慮は基本的に必要ないと思いますが、例年は「授業で扱ったことすべて」が出題範囲であるところ、今回は「物権変動を中心に」と事前に告知し、少し範囲を絞りました。また、法律答案については、授業や法職講座のランチョン・セミナーで何度か説明を受けているはずですし、この授業でも、一般論としての書き方、注意点を述べたものと小テストや過去問の解説として具体例を示しながら述べたものをe-classで公開していますが、やはり不慣れな人が多く、予備校の答案練習等で特別の訓練を受けている人とそうでない人の差が出やすいので、採点にあたっても多少の配慮をしています。

 さて、展開科目のメインの問題(Ⅰ)では従来、事例問題をベースにしながら、穴埋めや規定の趣旨説明などの「基本」問題、法律や判例についての知識と活用(あてはめ)に関する「応用」、「発展」問題とレベルの異なる、3種類の問題を出しています。今回は、詐欺を理由とする取消し、強迫を理由とする取消し、履行遅滞を理由とする解除が問題となる事例を出し、「自らの権利を主張するにあたり登記が必要かどうか」につき、取消し原因や取消し前後での違い(いずれも、取消しの遡及効とその制限)、取消しと解除との違い、背信的悪意者からの転得者の扱いを取り上げて、「対抗」の意味や判例理論(およびその問題点)に対する正確な理解を確認しました。その際、論点その他の情報は、甲野教授、乙山さん、丙田くん、丁原くんによる会話文で提示または誘導していますので、自分で論点を見つけ出せなくても(あるいは、そもそも論点を覚えていなくても)、知識さえ有していれば、六法を手がかりに対応できるようにしています。Ⅱでは、文章の誤りを正す問題を2問出しました(時効取得者と時効完成前の第三者の関係、占有改定による即時取得)。Ⅱのうち、1問は、1月に実施した小テストとほぼ同じ問題、もう1問も過去問で扱ったテーマで、いずれもe-classで問題および解説を公表していますので、ボーナス問題といえるでしょう。

【講評】

 単純な穴埋めはよくできていましたが、もう1つの穴埋めは、文脈から考えて、問題となる条文の文言(177条の「第三者」)、判例特有の表現(「復帰(的物権変動)」「背信的悪意者」)を入れる、つまり、知識を「使いこなす」必要がありますので、穴埋めにしては正答率が低めでした。登記の要否に関する記号問題も、全問正解という人は意外と少なかったものの、比較的よくできていたと思います。 他方、論述問題では、根本的な理解不足、誤解が目立ちました。たとえば、「詐欺にもとづく取消しの場合、善意の第三者がいれば、96条3項により、取り消すことができない」「登記をしなければ、取り消すことができない」といった叙述が結構多くみられました。授業中に何度も強調した「問題」の違い、つまり、物権変動の根拠となる法律行為の効力を取消しにより否定することができるかどうか(取消し原因があるかどうか)の「問題」と、取消しの効果として目的物の返還を主張することができるかどうかの「問題」(96条3項は「善意の第三者」との関係で、これを制限しています)とその主張のために登記が必要なのかどうか(177条により、登記なくして対抗できない「物権変動」「第三者」か)の「問題」(物権法で扱うのは、基本的にこの問題)が十分に整理できていないのだろうと思います。また、「無権利者との契約は無効である」といった誤解、公示の原則と公信の原則の混同も、相変わらず見られます。それらしいフレーズを使っていたとしても、「占有改定は引渡しではない」とか、「引渡しがあるまで所有権は移転しない」などの叙述があれば、「丸暗記しただけ」と思われても仕方ありません。下に示した点数の分布からすれば、残念ながら、今回、C評価の中には多数、B評価にも一定数、そうした根本的誤解をしている人が含まれていると思われます。理由づけや条文上の根拠に全く触れていない答案も多数ありました。これは「書き方」に慣れていないせいだろうと思い、今回は大目に見ましたが、目前に迫っている民法改正を例にとるまでもなく、法律の内容は変わりますから、学生時代に丸暗記した知識などすぐに使えなくなってしまいます。しかし、条文を読み解く力、条文と結論を結びつける理屈の立て方、それを用いて問題を解決する力は、たとえ法律が変わっても、生涯、使えます。授業では、何度も、条文を確認するよう促していますが、ぜひ、授業で教師が話していること、教科書に書かれていることの条文上の根拠、表現を確認し、条文から答えを導き出す習慣をつけてほしいと思います。


 基本問題21点、応用問題20点、発展問題9点で採点したところ、平均点は50点満点中29点(得点率49%、要するに、100点満点に換算して58点。以下同じ)、最高点は49点(98点。6名います)、45点以上(90点代)が21名、44.5~40点(80点代)は62名、39.5~35点(70点代)は81名、34.5~30点(60点代)は113名、29.5~25点(50点代)は95名、24.5~20点(40点代)が122名、19.5~15点(30点代)68名、14.5点(29点)以下が32名でした。70点以上の人も少なくなく、これ以上難易度を下げれば満点続出の状態になりますが、他方で、一番多いのが40点代と出来不出来の差が非常に大きいことがうかがわれます。大学の成績は60点以上を合格とするのですが、問題の難易度を勘案しなければなりませんから、偏差値を用いて平均点付近がC評価となるように調整した結果、受験者総数595名(うち追試1名)中、Aは116名(うち13名は小テストによる繰り上げ)、Bは120名(うち10名は繰り上げ)、Cは145名(うち8名は繰り上げ)、Dは133名(うち9名は繰り上げ)、Fは81名となりました(大学HPで公表されるFには、非受験者27名も含まれますので、Fは108名となります)。詳しい採点基準や講評は3月初めにe-classで公表し、その旨通知していますが、見られなかった人は今出川教務センター(法学部)のカウンターで申し出てください。