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  5. 統治の原理Ⅱ/統 治 の 基 礎 ― 太田 裕之

統治の原理Ⅱ/統 治 の 基 礎 ― 太田 裕之

1.出題意図

 問い(1):講義で検討した判例を中心に、判旨を正確に理解しているかどうかを問う問題とした。

 問い(2):最も時間をかけて講義で検討した「司法権」の領域について、その重要な論点である「部分社会の法理」の理解を問う問題とした。

 

2.講評

問い(1):10問出題し、配点は各問5点、合計50点であったが、ここでつまずくと問2で得点しても単位はもらえない、という「警告」を講義中に行ったが、問1の平均得点はおそらく30点あたりであった。誤った解答が多かった設問は、安保条約に関する砂川事件最高裁判決が、安保条約が司法審査の対象には「全くなりえない」とした設問(「一見極めて明白に違憲無効」でない限りは、司法審査の範囲外であるとした)、「浦和事件」について、浦和地裁での浦和被告についての裁判であったという、偶然の一致について問う設問、警察法改正無効訴訟での、最高裁が両院の立法裁量権ではなく、自律権を重視して司法審査を行わなかったことについての設問などが代表的なものであろうか。

 

問い(2):平均点は30点代後半であった。以下の諸点について述べられているかどうかを評価の基準とした。

(1)部分社会論とは、司法権の範囲ないし限界についての議論の一つである。

(2)地方議会、弁護士会、宗教団体、労働組合、大学などの自律的な法規範をもつ社会ないし団体の内部における紛争について、それが内部規律の問題にとどまる場合、その解決をその社会や団体の自治的措置に委ね、司法審査を行わない(あるいは司法審査の対象外とする)という考え方である。もっともその問題が単なる内部規律の問題にとどまらない重大事項や、一般市民法秩序と直接の関係を持つような場合には、司法審査の対象とするという考え方である。

(3)部分社会論は判例から導かれた考え方で、その発端は米内山事件における田中少数意見の「法秩序の多元性」論にあった。

(4)その後最高裁は地方議会議員懲罰事件においてこの理論を採用し、地方議会という「自律的な法規範をもつ社会ないし団体に在っては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判にまつを適当としないものがある」とし、出席停止のような懲罰はこの場合に当たるが、議員の除名処分は議員の身分の喪失に関する重大事項であって単なる内部規律の問題にとどまらず、司法審査の対象となるとした。

(5)また大学に関しては、富山大学事件において最高裁は、大学が自律的、包括的な権能を持ち、「一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成」しているので、このような「特殊な部分社会である大学における法律上の係争のすべてが当然に裁判所の司法審査の対象となるものではなく、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題」は司法審査の対象とはならないと判示した。

(6)政党についても最高裁は部分社会論の考え方をとり、共産党袴田事件、日本新党繰り上げ当選無効訴訟において、議会制民主主義において政党が重要な意義を持つことから、政党には高度の自主性と自律性を与え、自主的に組織運営をなし得る自由を保障しなければならず、政党の内部的自律権に属する行為は法律に特別の定めがない限り尊重されなければならず、除名処分の当否についても原則的に政党の自律的な解決に委ねるのが相当であり、裁判所の審判権は及ばないとしている。

(7)しかしながら何が自律的法規範を持つ部分社会とされるのかについて、裁判所は明確な基準を示しておらず、暴力団にも自律的法規範があるとされる可能性もありうる。また部分社会論が公立の大学や地方議会について説かれるときには、特別権力関係を言葉を変えて適用しているとの批判も可能である。そこで部分社会が司法審査の対象外となることの憲法上の根拠を明らかにしておく必要がある。憲法上の根拠としては、私的団体(私立大学、政党等)については、憲法21条の結社の自由、地方議会については憲法93条1項の地方議会の自律権、国公立大学については憲法23条の学問の自由から導かれる大学の自治が根拠となろうが、いずれにせよ司法審査の対象となるか、またその団体に対する司法審査のあり方は、団体の目的、性格、権能、紛争の性格等に照らし、個別具体的に判断されるべきことになる。