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  5. 行政救済法Ⅱ/行政争訟法 ― 小川 一茂

行政救済法Ⅱ/行政争訟法 ― 小川 一茂

解答(例)

問1

1 誤 国家補償制度 → 正 行政争訟制度

3 誤 該当する → 正 該当しない

5 誤 不可能である → 正 不可能ではない(可能である)

8 誤 却下判決 → 正 事情判決

11 誤 該当しない → 正 該当する

12 誤 抗告訴訟 → 正 当事者訴訟

14 誤 許される → 正 許されない

 

出題意図・講評

 問1は、行政事件訴訟法等、この講義で取り扱った点に関する基礎的な知識が、講義及びその復習を通じて確実に理解できているかを問うことを意図した出題である。全体として概ね解答状況は良好であったが、上記7問を完全正答している答案はほとんどなく、また、不適切な内容の文章を摘示できてはいても、不適切な部分をちきんと直せていない答案も散見された。この問1で5問(配点で30点分)以上正解できていないようであれば、講義全体に対する理解が不十分と見なされうるものであり、実際にそのような者は、以下の問2・問3を合わせても合格点に到達していない場合が多かった。

 

問2

 行政事件訴訟法はその規定中において、民事保全法に基づく仮処分を排除し、原則として執行不停止の原則をとることを明らかにしている。執行停止制度は、こうしたいわば原則に対して、例外的に法の定める条件を満たした場合には、争われている行政処分の執行停止を認める制度である。

 執行停止制度により争われている行政処分の執行停止が認められるためには、行政事件訴訟法に定めるいわゆる形式的要件および実体的要件を充足している必要がある。このうち(本問で問われている)実体的要件とされるものは、3点あると考えられている。

 まず、①「処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」という要件である。この①の条件を充足すれば、執行停止は認められるため、この要件は積極要件と呼ばれることもある。かつては「重大な損害」ではなく「回復困難な損害」という文言が用いられていたが、法改正のより「重大な損害」に変わったことで、経済的損失についても執行停止の可能性が開かれることとなった。なお、この①の条件は、原告(執行停止の申立人)が主張・疎明責任を負う。

 そして②「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」、③「本案について理由がないとみえるとき」という要件がある。このうち③の要件は、本案として継続中の訴訟において原告側の主張に理由がなさそう(つまり、原告敗訴となる)と考えられる場合を意味すると考えられている。この②あるいは③の条件を充足してしまうと、執行停止は認められない。そのため、これらは消極要件と呼ばれることもある。この②及び③の条件②ついては被告側(行政側)が主張・疎明責任を負う。

 

出題意図・講評

 問2は、執行停止制度の内容(とりわけ執行停止の要件)について理解できているかを問う問題である。解答すべき点にさほどの理論的な複雑さはなく、概ねきちんと解答できていた。ただし、答案の中には形式的要件と実質的要件を混同しているものも散見された。

 

問3

3-1

 Yの主張は「B 法律上保護されている利益救済説」に立つものであると考えらる。この法律上保護されている利益救済説とは、法律の解釈により「法律上保護されてる利益」を導き出す説であり、現在の判例の採る立場であるといえる。そして「法律上保護された利益」であるか否かの判断においては、争われている行政処分の根拠となる法律の目的が「個人的利益」の保護か「公益」の実現かのどちらにあるのかが重要な点となる。ここで、法律の目的が不特定多数の者の利益、いわゆる公益の保護にあり、原告の主張する利益がこうした公益の中に吸収解消されてしまうような場合は、そのような利益は「法律上の利益」とは認められない。逆に、単に「公益」の中に吸収解消されるにとどまらず、法律が個々人の個別的利益を保護する趣旨であると解される場合には、そのような利益は「法律上の利益」として認められる。このような公益・個別的利益区分論をこの考え方は採用している。

 そこでYの主張をみると、Yの主張は、①もっぱら本件許可処分の根拠となる法条の解釈を基本とし、その解釈の結果、その目的は公益の実現あるとしていること、②被害者となりうる原子炉設置施設の周辺に居住する者が受ける可能性のある被害の性質・内容・態様等を考慮していないという点に特徴がみられ、これらの点は上記「B 法律上保護されている利益救済説」の内容に合致するものといえる。

 

3-2

 行政事件訴訟法は現在、第9条第2項において原告適格を判断する際の考慮要素等について定めている。同項は、①処分の「根拠となる法令の規定の文言のみによることなく」原告適格の有無を判断しなければならないこと、②「当該法令の趣旨及び目的」を「考慮」しなければならなず、また、この「考慮」においては、「当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的」を「参酌」しなければならないこと、③「当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質」を「考慮」しなければならず、この「考慮」においては、「害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度」を「勘案」しなければならないことを定めている。

 この規定の内容を前提として、問題の事例において考慮すべき事項を検討することが、本問の解答においては必要となる。例えば、指定したテキスト(176~177頁)では、「原子炉施設周辺に居住する者が当該施設に近接すればするほど、生命の危機が生じ、生命が維持されてもその身体に生ずる被害は重大なものとなる。原子炉施設周辺に居住していない者であっても、所有する土地や農作物等の財産が放射能汚染によってその財産的価値を剥奪されるような被害を受ける場合には、この者の生命や身体に被害が生じないとしても、財産に及ぶ被害の内容性質や態様程度の『勘案』が裁判所によって行われなければならない」と述べ、生命・身体以外の考慮事項も存在していることを示している。これら考慮事項をきちんと説明していれば、本問においては評価の対象となる。

 

出題意図・講評

 問3は、取消訴訟の訴訟要件の一つである「原告適格」につき、①原告適格の概念(学説)をきちんと理解しているか、②原告適格の概念の拡大の過程を理解しているか、③そしてそれらを用いて議論ができるかを問う問題である。

 答案においては3-1においてB説を摘示するところまではほぼ問題がなかったものの、B説の概要の説明やB説を採るに至った理由(Yの主張のB説へのあてはめ)を欠く答案も多く見られた。前者を欠いていた場合には上述①及び②のポイントに対する理解が不十分であるとみなさざるを得ず、また、後者を欠いていた場合は③のポイントが不十分であるという評価になる・

 また、3-2では行政事件訴訟法第9条第2項を摘示することが、解答をする上での前提となる。答案の中には第9条第2項についての言及がないものも散見された。また、大多数の答案は考慮すべき事項として生命・身体を挙げていたが、上記の通り、指定したテキストにおいても生命・身体以外の考慮要素もあることが示されている。こうした点はテキストを精読しておけば理解と記述は困難ではないはずであるが、生命・身体以外の考慮要素についてまで述べられている答案はほとんどなかった。ノートや講義中に配付したプリントを用いた復習もさることながら、テキストを用いた復習もしっかりと行っていただきたい。