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  5. 日 本 法 史Ⅰ/日本裁判法史 ― 西村 安博

日 本 法 史Ⅰ/日本裁判法史 ― 西村 安博

(1)出題意図

 

 秋学期の講義では、中世〜近代における日本法制史上の基本的な事項に関して概説しましたので、設問においても講義で取り扱った内容に関して基本的な理解を得ているか否かを問うことにしました。可能な限り講義に出席し、解説を聴きながらポイントをきちんと把握することが出来ていれば出題の趣旨を直ちに理解することは出来たのではないかと思われます。その一方で、解説された事柄を教科書の余白に書き込んでおくなり、あるいはノートなどにメモをとるなどしておくことが大切ですが、日頃からe-classの配付資料や教科書を適宜読み直すなどの復習を実行していたならば、さほどの困難を覚えることなく答案を作成することが出来たのではないかと思われます。

 さらには、講義の終わりに次回講義の内容を予告することにしていますので、配付資料あるいは教科書の該当する箇所を事前に読んでおくことで理解がより一層深められることになったものと思われます。初回の講義でご案内しておいたように、分かりづらい言葉(用語)については、図書館のホームページから閲覧することができるデータベースの一つであるジャパン・ナレッジプラスを活用して正確な意味を確認しておくこともお奨めしていたところです。

 なお、今回の試験では予告していた通り、法学部講演会の感想文の評価を加算して総合評価を行っています。

 

 【設問Ⅰ】は、明治期において近代的な法典の編纂が進められる端緒となった事柄に関する基本的な理解を問う内容の出題でした。この設問に関わる内容はe-classで配布した資料の中に詳しく記されていますが、同時に講義の中で解説された事柄を想い出しながら、明解な説明が行われていることが期待されています。

 【設問Ⅱ】では、いわゆる「民法典論争」を本格化させることになった穂積八束の論文「民法出テヽ忠孝亡フ」の中から取り出した二箇所の部分から一つを選択して、その具体的な内容を丁寧に解説することを求めています。

 【設問Ⅲ】では、鎌倉幕府の裁判にみられる「和与」に関して、その基本的な理解を押さえた上で、裁判手続における取り扱いの実態に関する説明を求めています。

 【設問Ⅳ】は、江戸幕府の裁判手続においては非公認とされていた「公事師」は規制の網の目をくぐって活動してことが明らかにされているが、この「公事師」と、公認されていた「公事宿」とは全く異なるものであったことについて丁寧に説明を試みることを求める趣旨の設問でした。

 いずれの設問も、配付資料や教科書の中で取り上げられている事柄に関するもので、講義の中では詳しく解説を行ったものです。

 

(2)採点講評

 概ね合格点に達した答案が多かったという印象を抱いています。しかしながら残念なことに、配付資料や教科書の文章を鵜呑みにして文章の引き写しを行っている答案が多数見られました。これらの答案には基本的に加点を施さないことにしました。これに対して、あくまでも自分の言葉で説明しようと懸命に努めている答案には高得点を与えることにしました。濃く読みやすい文字で答案を作成するようにと予め指示を出しておきましたが、乱雑な筆跡の答案も少なくなく散見されたのは大変残念でした。

 一言付け加えておきたいのは、講義に毎回出席を心掛けていたことが感じられる諸君の答案は非常に充実し優れた内容となっていることが分かります。その努力には心より敬意を表したいと思います。毎回の出席が叶わなかった諸君であっても、e-classで配布している資料や教科書の内容を丁寧に学習することを通じて自分なりの理解を得ていれば、それなりに充実した答案の作成が実現できたのではないかと思っています。

 【設問Ⅰ】では、e-classの配付資料を中心に教科書の第7講・第26講の内容を参照しながら答案を作成することが期待されています。設問の主題である「誤訳も亦妨げず、唯、速訳せよ」の意味を正確に記していない答案、この言葉は司法卿江藤新平が箕作麟祥に対して伝えられたものであるという事実について、人名を押さえた上で正確に記していない答案、法典の編纂はフランス語に通じていた箕作を中心にフランスの法典を速訳することによって行われようとしていたこと、その目的は焦眉の急を要する不平等条約の改正(関税自主権の回復、治外法権の撤廃)にあったこと、などの事柄について丁寧に説明することが求められています。この設問の大前提となる「誤訳も〜」の意味を全く記していない答案や、正確な意味を記していない答案にはほとんど加点を行っていません。また、以上に挙げた要点の一部しか取り上げていない答案に対しては、わずかな加点に止まっています。繰り返しになりますが、教科書の内容などをそのまま書き写していると思われる答案には加点を行わないことにしています。

 【設問Ⅱ】では、教科書の第26講に記載される史料の解釈を試みながら、該当する史料の内容を具体的に説明する作業が行われることを求めています。概ね良く出来ていたように思いますが、具体的な内容を正面から説明するのではなく、民法典論争の説明などをはじめとする、これらの史料の周辺に関する事柄について教科書の内容をそのまま書き写して説明を試みている答案も少なからずみられました。このような答案には加点を行っていません。

 【設問Ⅲ】では、教科書の第9講あるいは第10講における理解が前提とされています。幕府の和与に対する基本的な考え方が『沙汰未練書』の奥書に記されていること、「和与」に関する基本的な定義は『沙汰未練書』に記される「私和与」の定義から読み取ることが可能であること、訴訟当事者は裁判所に対して和与状を提出することにより和与の認可を申請し、和与認可裁許状の交付を受けていたこと、和与認可裁許状の交付を受けていないとされる「私和与」も存在していたことが考えられるが、それは具体的にどのような状況の下で生じ得たものと考えられるのか、などの事柄について丁寧に説明することが必要です。鎌倉幕府の成立の意義、あるいは和与が仏教思想の影響を受けていたことなど、「和与」をめぐる周辺的な理解を説明することに集中している答案も散見されましたが、これらの答案には加点しないか、あるいは低い点数しか与えていません。

 【設問Ⅳ】では、第6講で説明されているように、どのような事情から「公事宿」=「公事師」という誤解が生じることになったのかについて問うています。概ね良好な成績であったように思われますが、教科書の記述内容をそのまま書き写している答案も決して少なくなく、このような答案には加点していません。「公事宿」が幕府公認であり裁判制度の中に組み込まれていたのに対して、「公事師」は非公認であったとする結論のみを記すに止まり、肝腎なその背景事情について丁寧に説明していない答案には低い点数しか与えていません。江戸幕府の裁判制度において「公事宿」がどのような意味において重要な役割を果たしていたのかを、分かり易く丁寧に語っている答案には高得点を与えています。