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  5. 民法VIb(相続) ― 上田 誠一郎

民法VIb(相続) ― 上田 誠一郎

<出題意図> 


遺産の分割にあたって、相続分は基準として拘束力を持つかを中心に、相続分と遺産分割の関係を論じなさい。

 

遺産分割は、共同相続人各自が相続開始時に取得した権利義務の割合(=具体的相続分)を基礎として、この権利義務の内容を具体的に形成し、確定する手続きである。遺産分割をへて遺産中の個別の財産が相続人に確定的に帰属する。

相続人間の協議で遺産分割がなされる場合、各共同相続人が、全遺産上に有し、したがって観念的には個々の相続財産の上にも有する持分権の交換・譲渡・放棄などにより、以後は単独の所有名義で個々の財産を支配することになる。このように財産権の処分を含む遺産分割は、当事者の私的自治に属するのが原則であり、合意の形成に問題がなければ、結果として「相続分」と異なる結果となっても有効である。遺言による相続分の指定がある場合、被相続人の意思の尊重との関係が問題となるが、相続人にはそもそも相続放棄の自由が認められている以上、相続人の意思が優先するというのが一般的理解である。

これに対して審判による分割の場合には、相続人の私的自治による財産処分という要素が存在しないため、相続分は分割の基準として裁判所を拘束すると考えられる。遺産分割は遺産に属する物または権利の種類、性質に即し、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮してなされるべきであるが(§906)、906条は相続分に応じて遺産の帰属を定めるにあたり考慮すべき事項を定めた規定であり、法律上定まった相続分を変更することを許した規定ではないとされる(東京高決昭42111家月19655)。

  以上が基本である。さらに以下の点について論じているとなおよい。遺産分割で、相続分と異なる比率で不動産を取得した相続人は、その取得を遺産分割後の第三者に対抗するためには登記が必要である。そのため第三者が登場すると、相続分が遺産分割に優越する場合が生ずる。また消極財産も遺産分割の対象としうるが、債権者の承諾がなければ、債務を引き受けなかった相続人も免責されない。

  なお、一部の答案がいわゆる「相続させる」遺言について論じてくれていたので、付言すると、最高裁の立場に従えば、遺言で遺産分割方法の指定がある場合には、「その権利取得を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り」、相続人は、被相続人の死亡時に直ちに当該遺産を相続により取得することになり、遺産分割の対象とならないことになる。そのため相続分を超える財産についていわゆる「相続させる」遺言がされた場合に、最高裁のように、分割方法の指定とともに相続分の指定もされたと解するときには、相続人間でその財産も遺産分割の対象とすることがとくに合意がされない限り、指定相続分が、実質的には遺産分割に当っての相続人の自由を制約することがある。

 

<講評>

については、問題の所在自体を理解できていない解答も多く、全体の成績を引き下げることになったのは残念である。

 

 

<出題意図>

画家A20161月に死亡した。相続人は配偶者X1と母親X2であった。Aは、20104月と20154月に、それぞれ3000万円と評価される自己の作品を京都国立近代美術館(以下Yと略)に寄贈し、また「アトリエにある全作品をYに寄贈する」と遺言をしていた。Aの遺産は、評価額5000万円の自宅土地建物、1000万円の預金であり、遺贈された作品の評価額は6000万円であった。また住宅ローンの残額が1000万円あった。この場合のX1X2Yの権利義務を論じなさい。

 

遺留分の侵害の有無と侵害があった場合の効果が問題の中心となるが、試験場でも指摘した通り、「X1X2Yの権利義務」が問われているので、より広く考える必要がある。

仮に遺留分侵害があったとしても、(方式など他の要件を満たしていれば)遺言自体有効である。遺留分権者が遺留分減殺請求権を行使しない限り、遺贈も完全に有効である。

その場合、この事案では遺言執行者が定められていないので、相続人X1X2が遺贈義務者となり、Yに目的物であるアトリエにある全作品を引き渡す義務がある(遺贈の効力につき債権的効力説をとればそれらの所有権を移転する義務も負うことになる)。受遺者Y側には遺贈を放棄することが認められる(§986)。また権利関係を確定させるためX1X2には相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をするよう催告する権利が与えられている(§987)。

遺留分についてみると、遺留分の基礎財産は[相続開始時の被相続人の財産(含遺贈)]+[一定の(生前)贈与財産]-[遺産債務](§1029)であり、この事案では、生前贈与としては、相続開始前の1年間になされた20154月の贈与が算入される。20104月の贈与については、その時点ではそもそもX1X2の遺留分を侵害するものではなかったから、「遺留分権利者に損害を加えることを知って」した贈与には当たらず、基礎財産には算入されない。この事案の遺留分の基礎財産は5000万円+1000万円+6000万円+3000万円-1000万円=1億4000万円である。

相続人は配偶者と直系尊属であるから、総体的遺留分は二分の一、それを相続分相続分の割合に応じて配分するとX1X2の個別的遺留分はそれぞれ三分の一と六分の一になる。遺留分の侵害額は2000万円なので、X1X2はそれぞれその三分の二と三分の一について遺留分減殺請求権を行使しうる。贈与は、遺贈を減殺した後に減殺することができる(§1033)ので、この事例においては遺贈のみが減殺の対象となる。

遺留分減殺請求権が行使しされた場合、遺贈が未履行の場合、その額に相当する作品の引き渡しを拒絶でき、既履行の場合、その額に相当する作品の返還を請求できる。いずれの場合もYは価額を弁償して遺贈された作品全部を取得することができる。

 

<講評>

この問題については、比較的よく理解できた解答が多かったと思う。