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川嶋 四郎

失われた「民事訴訟法学」を求めて―『比良のシャクナゲ』から『山家学生式』へ

教授 川嶋 四郎

<専門分野>民事訴訟法
<研究室>光塩館508

プロフィール

 滋賀県生まれ。膳所高校、早稲田大学、一橋大学大学院で学び、九州大学大学院教授を経て、現職。これまで、「人間に対する温かい眼差しをもち社会正義を実現できる法律実務家」等の育成に努めてきました。困難な時代だからこそ、学生・院生の皆さんとともに、政治やイデオロギーを超えて、「自由で公正なプロセス」を探求し、「人を大切にする国家」のあり方を、共に考えたいと思います。

私の現在の研究:学生の皆さんへ

 私は、これまで民事訴訟法を中心として、民事執行・保全法、倒産法、ADR(裁判外紛争解決手続)、裁判所法、環境訴訟法などをも包含する「民事救済法」という法領域を研究し、その成果をもとに教育に携わってきました。法的な救済を求めて紛争解決過程を利用する人々や企業等が、手続過程における十分な対論を通じて、どのように公正な「法的救済」を創造することができるかを探求する果てしなき営みを続けています。民事手続を通じた救済のあり方を、民事訴訟法学における「祈り」にも似た気持ちで研究しているのです。

 今では昔のことになりましたが、私が大学に入学したとき、しばらく授業が行われませんでした。授業料値上げに反対する学生運動に抗して、大学がキャンパスをロックアウトし、授業を提供しなかったのです。私は、別の大学に通っていた高校の先輩(現、弁護士)を訪ね、さまざまな法律学に関する著作を教えてもらいました。なかでも特に面白かったのが、「企業の社会的責任」を論じた竹内昭夫論文と、「民事訴訟法理論はだれのためにあるか」という新堂幸司論文でした。前者は、「法律学的念仏宗、念仏宗的法律学」を戒めた興味深い論文であり、後者は、利用者のニーズの汲み上げを考えず、手続理論の機械的な適用を行う当時の最高裁の基本スタンスを、判例研究を通じて批判する内容のものでした。法学の初心者にとっても、自由な学問の香りに接した瞬間でした。それとともに、法と社会の関係の一端を垣間見ることができました。

 それから長い年月がたちましたが、その間、民事紛争の解決手続に関する法律は、ことごとく改正され、新しい手続法の世界が形成されました。利用者の一人ひとりが背負う人生の一コマを真摯に受け止め、法的な救済を創り出すプロセスが、整備されたはずなのです。ところが、最近この学問の世界が、だんだん窮屈に感じられるようになってきました。民事訴訟法学に清新な風を吹き込まれた井上正三先生や井上治典先生がお亡くなりになり、この世界の雰囲気も、かなり変化したように思います。世界的に蔓延しつつある新たな排他的で不寛容な構造化が、この世界にも忍び寄っているように感じるからかもしれません。井上靖の小説『比良のシャクナゲ』のような哀愁を感じ(詩集『北國』所収の同名の詩の方が、私は好きですが)、水上勉の戯曲『釈迦内柩唄』の不条理も思い出しました。ともかく、それでもたとえば、好きな野球をやめなかったジョー・ジャクソンは時を経て甦るのであり(キンセラ『シューレス・ジョー』参照)、凄いゲームはいつか掘り起こされるものなのです(同『アイオワ 野球連盟』参照)。公開の場で対等の機会が与えられたフェアーなゲームが展開する野球は、法廷の民事訴訟にも似ています(個人が、その実力のみで輝ける場所です。アピール・プレーは、手続異議権〔責問権〕の放棄・喪失の考え方にもつながります。チーム・プレーではシステムの質が試されます)。民事訴訟法学も、スポーツの世界を見習わなければならないのかもしれません。いずれにせよ、これからも、開かれた救済志向の民事訴訟法を目指して、新たな未来を創るために、過去を振り返りながら、さまざまな素材から手続の基礎理論を再考し、自由な学問風土を取り戻したいと考えています。昨年は、ルターが『95ケ条の論題』を提示して500年になる記念の年でしたが、今年は、伝教大師最澄が『山家学生式』を提出して1200年になります。一隅を照らし、社会に明るい救済をもたらすことができる裁判所の手続について、皆さんとともに考えてゆければと思います。

 なお、多少とも「救済法」や「民事訴訟法」の研究に関心をもつ人は、私の『民事訴訟過程の創造的展開』、『民事救済過程の展望的指針』、『民事訴訟法概説〔第2版〕』(以上、弘文堂)、『差止救済の近未来展望』、『民事訴訟法』(以上、日本評論社)、『公共訴訟の救済法理』(有斐閣)等を、また、法律実務家の養成に関しては、『アメリカ・ロースクール教育論考』(弘文堂)を、さらに、日本の歴史の中での裁判のありようについては、『日本人と裁判』(法律文化社)などを、図書館で手に取ってみてください。

講義・演習・小クラスについて

 2018年度は、学部では、「民事手続法概論Ⅰ」、「ADR・仲裁法」、「倒産処理法Ⅰ(破産法)」、「民事訴訟法演習(2、3、4年)」、「特殊講義(アメリカ民事手続法Ⅰ・Ⅱ)」、「特殊講義(裁判と文学Ⅰ・Ⅱ)」、「特殊講義(民事訴訟法)」を、大学院では、各種の民事訴訟法演習、法科大学院では、民事訴訟法演習やADR 関係の授業等を担当します。学生の皆さんには、今後も、緊張感をもち、一期一会的な語らいの中で民事救済手続過程と向き合い、公正なプロセスのあり方を探究してもらいたいと願います。特にゼミでは、自由な雰囲気のもと、友人や家族を大切にできる多様な人材が集まることで、心豊かで刺激的な学修の場ができることを期待しています。