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川嶋 四郎

「民事訴訟法学」の祈り-民事裁判の「未来の物語」を

教授 川嶋 四郎

<専門分野>民事訴訟法
<研究室>光塩館508

プロフィール

 滋賀県生まれ。膳所高校、早稲田大学、一橋大学大学院で学び、九州大学大学院教授を経て、現職。これまで「人間に対する温かい眼差しをもち社会正義を実現できる法律実務家」等の育成に努めてきました。長年にわたって盲導犬関係のヴォランティアを行いながら、献身的な人々や犬たちから、多くのことを学び続けています。このような時代だからこそ、学生・院生の皆さんとともに、政治やイデオロギーを超えて、「自由で公正なプロセス」を探求し、「人と未来を大切にする国家」のあり方を、共に考えたいと思います。

私の現在の研究:学生の皆さんへ

 これまで民事訴訟法を中心として、民事執行・保全法、倒産法、ADR(裁判外紛争解決手続)、裁判所法、環境訴訟法などをも包含する「民事救済法」という法領域を研究し、その成果をもとに様々な角度から教育に携わってきました。私は、法的な救済を求めて紛争解決過程を利用する人々や企業等が、手続過程における十分な対論を通じて、どのように公正な「法的救済」を造り上げることができるかを探求する果てしなき営みを続けています。この法的救済を、民事訴訟法学における「祈り」にも似た気持ちで研究しているのです。

 昨年も人生を豊かにする様々な言葉に接することができ、その多くが民事訴訟法学を深めるのにも役立ちました。なかでも、ともに「言葉を奪われている」二人の女性の魂の交流を描いた、高山文彦『ふたり:皇后美智子と石牟礼道子』は、水俣病事件の被害者が、困窮と苦痛の中で究極的に何を求めてきたかを深く考えさせてくれました。お金の問題に収斂されがちな法の世界で、寄り添う人間の「言葉」のもつ価値に、思い至らざるを得なかったのです。昨年は、言葉を大切にした哲学者・鶴見俊輔さんが亡くなられました。隣人でした。同志社でも教鞭をとられていた時期があります。その座談を集めた『昭和を語る』には、戦後史が凝縮されていました。失敗したと思う時に後戻りをする先例をはっきり残すことが、日本の未来のために重大な役割を果たす、というのは至言だと思います。戦争、公害、薬禍、原発事故・・・学ぶべきものが、あまりにもたくさん存在するからです。昨秋のニュースで知った、アレクシエービッチ『チェルノブイリの祈り』には、「たくさんの人があっけなく死んでいく」ときに、人々が耳を傾けるのを嫌がる言葉、そして物語が、淡々とつづられていました。その原発事故から約10年後の1997年に出版されたこの本の中に、著者が、未来のことを書いている錯覚を覚える、と記していたのが印象的でした。5年前の日本での出来事を忘れることができないからです。私たちは、法学の分野でも、「進歩」を求めています。ただ、「進歩に対する迷信が、退歩しつつあるものをも進歩と誤解し、時にはそれが人間だけでなく生きとし生けるものを絶滅にさえ向かわしめつつあるのではないか」という、民俗学者・宮本常一の言葉は、科学裁判等と呼ばれる現代型訴訟を考える上でも、私たちに重くのしかかってくるように思います。

 早天祈祷会に出席し、新島先生のお墓参りを済ませた後、郷里の懐かしい人たちと、知恩院、そして比叡山・黒谷青龍寺にお参りしました。深い木立の中の静謐なその場所は、法然上人が25年間経典を読み修行を積まれた場所です。静かに民事訴訟法学を修学したいとの思いを新たにすることができました。学生の皆さんと、ゼミや授業を通じて、学びが共有できればと考えています。なお、多少とも「救済法」や「民事訴訟法」の研究に関心をもつ人は、『民事訴訟過程の創造的展開』、『民事救済過程の展望的指針』、『民事訴訟法概説〔第2版〕』(以上、弘文堂)、『差止救済の近未来展望』、『民事訴訟法』(以上、日本評論社)、『公共訴訟の救済法理』(有斐閣)等を、また、法律実務家の養成に関しては、『アメリカ・ロースクール教育論考』(弘文堂)を、さらに、日本の歴史の中での裁判のありようについては、『日本人と裁判』(法律文化社)などを、図書館等で手に取ってみてください。

講義・演習・小クラスについて

 2016年は、学部では、「民事手続法概論Ⅰ」、「ADR・仲裁法」、「倒産処理法Ⅰ(破産法)」、「民事訴訟法演習(2,3,4年)」、「特殊講義(アメリカ民事手続法Ⅰ・Ⅱ)」、「特殊講義(裁判と文学Ⅰ・Ⅱ)」を、大学院では、各種の民事訴訟法演習、法科大学院では、民事執行法・民事保全法やADR関係の授業等を担当します。学生の皆さんには、今後も、緊張感をもち、一期一会的な語らいの中で民事救済手続過程と向き合い、公正なプロセスのあり方を探究してもらいたいと願います。特に「演習」では、自由な雰囲気の下、多様な人材が集まることで刺激的な面白い学修の場ができることを期待しています。