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法律学科

実務に直結した実証的研究

教授 浅田 正彦

専門分野 国際法
  業績リスト
浅田 正彦

私の研究

学部時代は国際政治学を専攻していましたが、指導教官(ご自身も国際法から入られた)の勧めもあって、大学院から国際法を専攻することになりました。研究を始めてみると、とても面白い分野であることが分かりました。口の悪い国内法の人には「国際法は法か?」などと言われますが、「当たらずと雖も遠からず」というところがなくもなく、国際法の形成過程はまさに国際政治そのものであり、国際政治の面白さが国際法の立法過程にも見出せます。ある規則がなぜそのような内容になったのか、その背景には何があったのかを考えることは、重要であるだけでなく、大変興味深いものです。

私自身も、軍縮の分野で条約の作成にかかわりました。30代前半の若いときにジュネーブの日本政府代表部に2年間勤務して、化学兵器禁止条約という大部の条約を作りました。その際の交渉における面白いやり取りなどは機会があればお話したいと思います。その後この条約は発効して、オランダのハーグに本部を置く国際機関も設立されましたが、最近はシリアでの化学兵器使用問題などで西側諸国とロシアが鋭く対立して、ミニ安保理の様相を呈しています。もちろん、条約の履行過程にも国際政治が入ってきます。しかし、条約という法がある以上、締約国に無規制の自由な行動が許されるということにはならず、それぞれが自国の行動をいかに法的に正当化できるかという法論理の説得力の世界となり、それはそれで条約の作成に劣らず大変興味深いものです。

10年ほど前になりますが、国連の安保理にも勤務しました。こちらは北朝鮮に核開発をやめさせるために発動された国連制裁の監視の任務でした。世界の7人の専門家で構成されるパネルに参加しましたが、その構成も政治の世界であり、その活動も政治の世界でした。しかし、ベースになっているのが法的拘束力のある安保理決議ですので、最終的には法から外れることは許されず、ここでも法と政治の面白い関係を楽しみました。これまでの国際法では、制裁決議が採択されればその実施にまで踏み込んで研究はしないというのが通常でしたが、最近は次々に制裁が強化されていくので、決議の問題点を実行の裏づけを伴う形で実証的に研究できるようになったといえます。

以上のように、私の研究は実務に直結させて法的分析を行うというのが特徴といえば特徴です。

講義・演習・小クラスについて

講義は基本的に教科書に沿った形で進めますが、日本との関係を含め実例を織り交ぜることで、具体的なイメージが湧きやすいように心がけています。また演習は、「初学者にもわかりやすく」をモットーにしています。

プロフィール

2021年3月まで京都大学法学部で20年以上国際法を教えていました。京大では田畑茂二郎先生が創始主宰者である国際法研究会が続いており、関西の研究者が毎週土曜日に研究会を開催しています。その関係で同志社大学の大学院生ともよく一緒になります。

京大の大学院を修了した後、まず岡山大学法学部に赴任し、12年間国際法を教えましたが、その前半の6年のうち4年間は外国でした。カナダに1 年、イギリスに1 年、スイスに2 年。「君はいつになると外国より岡山が長くなるのか」とよく弄られましたが、若いうちに外国に行っておくと視野が広がることを実感しました。

学会の関係では、2009年~ 2011年に日本安全保障貿易学会の会長、2013年~ 2015年に日本軍縮学会の会長、2018年~ 2020年に国際法学会の代表理事を務めました。2020年11月~ 12月に開かれた世界規模の学会である国際法協会(ILA)の世界大会では大会実行委員長を務めました。
また、2021年の国連総会での選挙で、国連国際法委員会の委員に選出されました。同委員会は条約案の作成を任務とており、今後も実務との関係が続きそうです。