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法律学科

自己負罪拒否特権の研究

助教  梶 悠輝

専門分野 刑事訴訟法
研究室 光塩館302
TEL 075-251-3442
助教 梶 悠輝

私の研究

私は、刑事手続における自己負罪拒否特権について研究しています。これは「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」ことを保障する被疑者・被告人や証人の権利です。被疑者・被告人については黙秘権とも呼ばれ、こちらの方がみなさんにはなじみがあるかもしれません。
この自己負罪拒否特権に関して、私は主に2 つの課題に取り組んできました。

1つ目は、刑事手続において、被疑者・被告人の黙秘の態度をその人に不利益に扱うこと(「黙秘からの不利益推認」)が許されるのかどうかです。日本では、これを認めれば被疑者・被告人に自己負罪拒否特権を保障した趣旨が損なわれるため許されないとの理解が一般的です。ところが、日本の自己負罪拒否特権の母国にあたる英米では、一定の要件のもとで部分的に解禁されるに至っています。果たして、「黙秘からの不利益推認」は許されるのでしょうか。部分的とはいえ英米で認められているにもかかわらず、許されないとすればその根拠は何でしょうか。

2つ目は、被疑者が所有するスマートフォン等のロックを犯罪捜査のために強制的に解除することが自己負罪拒否特権に照らして許されるのかどうかです。アメリカでは、パスワードでロックされている場合、パスワードという情報が伝達されるため、その解除の強制は自己負罪拒否特権が禁止する「コミュニケーション」の強要にあたるとの理解が有力です。その一方で、指紋認証や顔認証等の場合は、指紋や容貌といった、犯罪捜査で収集が許されている身体的特徴が採取されるにすぎず、「コミュニケーション」が介在しないため、強制的に解除しても自己負罪拒否特権侵害にはあたらないとの理解が有力です。もっとも、そうすると、ロック機能が果たす役割自体は同一であるにもかかわらず、デバイスのユーザーがパスワードを選ぶか生体認証を選ぶかにより、自己負罪拒否特権の適用の有無が左右されるという「ジレンマ」が生じます。この「ジレンマ」が解消されなければならないとするなら、「コミュニケーション」の有無という確立した基準を見直すか、ロック機能の社会的特性という法政策的な要素を正面から法解釈に取り込むかという、従来の自己負罪拒否特権論や刑事訴訟法学の根本を揺さぶる問題に行き着きます。

いずれの課題も、最終的な解答を導くには自己負罪拒否特権の正当化根拠に立ち返った検討が求められ、現在はこの点をとくに研究しています。

講義・演習・小クラスについて

講義科目は、1年生を対象とした「刑事手続法概論」を担当します。憲法や刑事訴訟法で保障されている手続の関係者の権利や適正手続といった「価値」を「自分ごと」として考えてもらえるような授業をしたいと考えています。
新入生を対象とした「リーガル・リサーチ」では、法律文献の探し方、資料のまとめ方、報告の仕方を学んでもらうのはもちろん、法的に考え議論することの醍醐味をみなさんと一緒に味わえるような授業にしたいと考えています。
ほかに「文献研究(英語)」も担当します。緻密な英文解釈に基づく法的議論を楽しく(でも真剣に)戦わせましょう。

プロフィール

大阪府出身。
2014年3月同志社大学法学部を卒業。2016年3月同大学大学院法学研究科前期課程を、2019年3月同後期課程を修了。2021年4月からは同志社大学特別任用助手を務めました。2023 年度からは法学部助教を務めます。
最近はコロナの影響で控えていますが、旅行が好きです。直近では北海道、島根・鳥取、鹿児島に行きました。友人と行くことが多いですが、初めての一人旅で訪れた三重の伊勢神宮に感動しました。