以下、本文になります
法律学科
倒産手続のこれまでとこれから
教授 浅野 雄太 ASANO Yuta,Professor
専門分野 | 民事手続法
Civil Procedure Law |
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研究室 | 光塩館419 |
TEL | (075)251-3328 |
yuasano■mail.doshisha.ac.jp ※■は@に置き換えてください。 |
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業績リスト List of Research Achievements |

私の研究
私は民事手続法、特に破産法をはじめとする倒産処理法を中心に研究しています。倒産や破産、破綻といった言葉は、ニュースなどで何かしら聞いたことがあるかと思いますが、まずもってネガティブなイメージを持つでしょう。その一方で、倒産、すなわち個人や企業が経済的に立ち行かなくなるという現象は、経済活動における新陳代謝の中で避けられないものです。ところが、このような経済活動は金銭的な対立や個人の生活にもかかわりますので、ルールの定めがなければ、借り手への過酷な取立てや貸し手の間での不平等などの問題が生じてしまいます。そこで倒産法は、このような混乱を防止し、秩序だった個人や企業の経済的再生を促すという役割を果たしています。
日本において「破産法」という法律は1922年に定められ、そこから100年以上経過する中で倒産処理手続は様々な発展、改正を見てきました。特にここ20年ほどは、当事者間の合意に基づいて裁判所が関与せずに倒産処理手続を行う「私的整理」が実務上大きな地位を占めるようになっています。私はこれまで、戦前から現在に至るま での倒産手続の歴史的系譜を検討しつつ、今後あるべき倒産処理手続とは何かについて研究を行ってきました。
先ほど述べた私的整理は、今後もさらなる発展と利用が見込まれます。そこで将来的には、特に倒産手続における当事者と裁判所の役割について問いなおす研究をしたいと考えています。
講義・演習・小クラスについて
本年度は、講義形式の授業として倒産処理法Ⅰ・Ⅱ、2・3・4年生の民事手続法のゼミを担当するほか、1年生向けの授業であるリーガル・リサーチを担当します。倒産処理法Ⅰでは破産法、Ⅱでは民事再生法を中心とする倒産処理法について、レジュメやスライドを用いながら講義形式で説明します。2年生のゼミでは、講義形式の民事訴訟法と並行して、判例を中心に発表や議論を通じて民事訴訟についての理解を深めます。3年生のゼミでは、単に民事訴訟法の判例を勉強するだけでなく、民事手続法の近時の法改正や倒産・執行など、民事手続法に関わるより広いテーマを、学生主体で見つけたうえで勉強します。4年生のゼミでは、裁判所傍聴を行うとともに、モデルケースをもとに実際に自分たちで裁判を行う、「模擬裁判」を行います。また、3・4年生の後期のゼミでは、他大学との合同ゼミ合宿を予定しています。リーガル・リサーチでは、図書館やデータベース等を利用しての資料の探し方・判例の読み方など、法律学を学ぶ上で必要な基礎的知識および技能の習得を目指すとともに、法学部での教育が、法曹志望者だけでなく、なぜ法曹以外の進路を目指す方にとっても重要であるかを学びます。
いずれの授業でも、学生には、予習および復習に熱心に取り組むことを希望します。またゼミでは、積極的に授業に参加することにより、民事手続法の知識だけでなく、学生間での親睦を深めるとともに、文章やスライドを通じて自分の考えをわかりやすくプレゼンすることや自分の意見に説得性を持たせることなど、将来どの進路に進むかにかかわらず社会において役に立つスキルを磨いてほしいと思っています。
プロフィール
1986年生まれ。小学校から高校にかけて神戸で育ち、2006年京都大学法学部入学。2010年同ロースクール、2012年同博士後期課程に進学。2016年より九州大学法学研究院准教授となり、2025年より現職。高校時代は歴史学、特に日本史の研究者となることを志望しておりましたが、様々な偶然を経て民事手続法の研究者となりました。