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法律学科

憲法上の人権主体像に関する研究

助教 松岡 千紘  MATSUOKA Chihiro, Assistant Professor

専門分野 憲法・ジェンダー法
Constitutional Law, Gender and Law
研究室 光塩館306
TEL (075)251-3532
業績リスト 業績リスト
List of Research Achievements
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私の研究

憲法上の人権主体としてはこれまで、自律的・主体的に行為できる個人が想定されてきました。ですが、現実社会において人々は、性別やセクシュアリティ、障害の有無等に基づく社会的立場を理由として様々な「自由」の制約を被っています。

私の研究では、この様々な「自由」の制約を被る現実の個人と、従来の「自律的個人」という人権主体との間に存在するギャップに着目し、ジェンダー法学のアプローチを用いて、前者の個人の「自由」を実質的に保障するための人権理論を考察しています。

ジェンダー法学とは、社会に存在する性差別や法それ自体が内包する性差別性を是正することを目的として、ジェンダーの視点から法を批判的に考察する学問分野です。かかるアプローチの有用性は、憲法上の人権主体像に関する基礎理論にも及びます。
ジェンダー法学は、近代の法主体像が前提とする自律的個人が現実社会で女性が被っている社会的抑圧を看過し成立していることを明らかにし、それらを適切に評価したうえで法主体像を再構築することを提唱してきました。このことは、憲法上の人権主体としての自律的個人にも問いを投げかけます。
かかる人権主体においては、人間が、自己にとっての利益を合理的に判断し行動する自律能力を持つことが前提とされています。ですが、現実には、人間が自律能力を発揮・行使するためには社会環境において諸条件が整っていることが必要であり、この条件には、社会的地位に基づく格差が大きく影響しています。

私の研究では、この格差を是正するための法制度の在り方を探求し、さらに、人権を、自律能力ではなく、人間がみな等しく抱えている「脆弱性」に基礎づけることを志向しています。
もっとも、このような人権主体像の再構築は、これまでの憲法学が前提としてきた人権理論の対国家性にも問い直しを迫ることになります。人間の「脆弱性」に対応した国家活動はおのずと肥大化することが予想されます。
そうすると、憲法論上は、このような国家活動をどのように適正化するべきかということも同時に考察しなければなりません。今後は、これまでの人権主体像の考察を踏まえたうえで、この国家活動の適正化という課題を、諸外国の議論も参照しつつ研究していく予定です。

講義・演習・小クラスについて

法学部では、「リーガル・リサーチ」及び「原典講読A(アメリカの法と政治)」を担当します。

新入生を対象とした「リーガル・リサーチ」では、講義や皆さんとの意見交換を通じて、法律学の資料の探し方や判例の読み方、法的思考の方法、法的意見の組み立て方等、法律学を学ぶ上で必須となる基礎的知識・技能の習得を目指します。「原典講読A(アメリカの法と政治)」では、アメリカの憲法理論に関する文献を講読します。講義を通じて、英文の正確な読解力の獲得、そして、法律英語の基礎的な知識の習得を目指します。
このほか、全学共通教養教育科目である「法学」も担当します。

プロフィール

大阪府出身。
社会人経験、育児経験を経て、様々な社会課題と法制度が深く関わっていることに気付き、2011 年に関西大学法学部へ入学しました。学部時代に憲法学の奥深さに魅了され、より専門的に学ぶために大阪大学大学院法学研究科へ進学し、大阪大学大学院法学研究科助教、大阪大学大学院高等司法研究科助教、大阪大学大学院法学研究科招へい研究員及び大阪大学社会技術共創研究センター特任研究員を経て、2024年4月に同志社大学法学部に着任しました。

趣味は川で魚をすくうこと、植物採集、音楽鑑賞(クラシック・日本語ラップ)、アロマ等です。