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法律学科

株式会社の資本概念の研究

助教 中筋 智規

専門分野 商法・会社法
研究室 光塩館517
TEL (075)251-3168
E-mail tnakasuj■mail.doshisha.ac.jp
※■は@に置き換えてください。

私の研究

「株式会社とは何か?」という問いに応答することほど、我々にとって難しいものはありません。

歴史を思い返せば、ローマ法は株式会社を知りませんでした。株式会社の起源については議論がありますが、一般的には16世紀イングランドのjoint stock companyや17世紀のオランダ東インド会社に求められます。初めは、1回1回の航海が中心でしたが、産業革命も経て、鉄道など、大資本を集めて長期間にわたって事業を展開するための制度として確立しました。株式会社制度は、経済が発展するために必要不可欠な法的技術になったのです。

日本は明治時代に西欧から「株式会社」という制度を継受しました。富国強兵の実現ために必要だったからです。偉大な先人たちは、株式会社制度を日本に根付かせるために、多大な努力を払いました。今まで全く未知だった制度を使うのですから、これは非常に難しいことでした。

ところで、株式会社は「法人」です(会社法3条)。中世教会法が法人の起源と言われていますが、株式会社がなぜ法人であるのかも未だ解明されていない謎です。ですが、今日、株式会社が法人であることを疑う者はほとんどいません。法人は自然人と違い物理的観察が不可能ですから、使い方を間違えると危険です。ですので、その取扱いは注意を要し、よって会社法の規定もそれに対応すべく複雑です。

法人としての株式会社は「資本」を基盤とします。株式会社は、多くの人から大きな資本を集め、巨大な事業を展開することを可能とします。現代の世界経済にも不可欠です。私の研究は、このような株式会社の「資本」概念から始まりました。株式会社は、我々に大きな利益をもたらす一方、使い方を間違えると多大な災厄をもたらします。会社法が「資本」を「制度化」したことは、ステーク・ホルダーの株式会社に対する信頼を守るための試みでした。その試みは、昔から現代に到るまで連綿と受け継がれてきたのです。

資本制度を語る上では、経済や会計への言及も欠かせません。株式会社は、商品市場における企業の主体であるとともに、その株式は金融市場で流通します。市場経済との関係は切っても切れません。このような高度な空間では、信頼が命綱となります。信頼が破綻した場合の悲惨さは私たちの歴史に刻まれている通りです。

果たして株式会社における資本制度が信頼の創出に成功したのか、評価は非常に難しいです。しかし、不断の努力を要することは間違いありません。我々はノイラートの船で旅路を行くほかないのです。

講義・演習・小クラスについて

今年度は、講義として「リーガル・リサーチ」「会社法Ⅰ」「商法総則・商行為法Ⅰ」、演習として「2年次演習」、外国語書籍の講読として「文献研究(英語)」「文献研究(ドイツ語)」を担当します。講義の際には、商法・会社法の制度の仕組みを、その存在理由から遡り、具体例や実務の動向を踏まえ、わかりやすく説明します。2年次演習は、会社法の基本的な知識があり、さらに理解を深めたい学生を対象に、会社法と経済学の分野を批判的に考察することを目的にします。文献研究は、標準的なテクストを輪読することにより、基本的な外国語文献の読解能力を涵養することを目的とします。

プロフィール

大阪府生まれ。
神戸大学法学部法律学科、京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻(ロースクール)(在学中に司法試 験合格)・同法学研究科法政理論専攻博士後期課程(在学中に公認会計士試験合格)、同特定助教を経て、2024年度から助教として同志社大学法学部に着任。