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法律学科
著作権法のこれからを考える
教授 山根 崇邦 YAMANE Takakuni, Professor
専門分野 | 知的財産法
Intellectual Property Law |
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研究室 | 光塩館520 |
業績リスト
List of Research Achievements |
私の研究
私の専門は、知的財産法です。その中でも、著作権法や不正競争防止法を中心に研究をしています。例えば、著作権法と聞くと、皆さんはJ-POPなどの大衆音楽を思い浮かべるかもしれません。大衆音楽が創作されてから、私たちの手元に届くまでには多くの人びとが関わります。その中で、著作権法が規律する者としては、主に著作者、実演家、レコード製作者、放送事業者の4者がいます。
ここで「著作者」とは、著作物を創作する者をいいます。大衆音楽の場合、歌詞・旋律を創作した作詞家、作曲家がこれに当たります。私たちは、歌唱・演奏を行うアーティストを「著作者」として考えがちですが、著作権法は、アーティストを「実演家」、つまり歌詞・旋律の著作物を実演(歌唱・演奏)して公衆に伝え届ける者として位置づけています。
こうしたアーティストは、ライブ公演によって直接、歌詞・旋律の著作物を聴衆に届けることもできますが、実際には、音楽CDや音楽配信サイトを通じて、あるいはテレビやラジオの放送を通じて、当該著作物を公衆に届ける場合の方が多いといえます。その意味で、アーティストの実演をレコーディングして音楽CD等の元になる音源を製作する者や、放送機器・設備を整えて放送事業を営む者も、歌詞・旋律の著作物を広範囲の人びとに伝達するうえで重要な役割を果たしているといえます。そこで著作権法は、前者を「レコード製作者」、後者を「放送事業者」として保護しています。
このように著作権法は、大衆音楽につき、著作物を創作した者を「著作者」として、著作物の公衆への伝達に寄与した者を「実演家」、「レコード製作者」、「放送事業者」として保護しているわけですが、このことは反面、大衆音楽の利用自体を阻害するリスクも孕んでいます。
例えば、音楽CDの利用を考えてみましょう。音楽CDには、歌詞・旋律(著作物)、歌唱・演奏(実演)、レコーディング音源(レコード)の3つが収録されており、それぞれについて「著作者」、「実演家」、「レコード製作者」が権利をもっています。もし音楽CDの利用にあたって逐一、事前に3 者の許諾を得なければならないとすると、権利処理が煩雑になりすぎて、音楽CDの利用が停滞しかねません。そこで著作権法は、私たちが音楽CDを私的に聞くために再生したり録音したりする場合には3者の許諾を不要とするルールを定めたり、ラジオ局が音楽CDを放送に利用する場合には、事前に「著作者」の許諾さえ得れば、「実演家」や「レコード製作者」の許諾は不要で、これらの者には事後的に使用料を支払えば足りるとするルールを定めたりして、利用の円滑化を図っています。
もっとも、このような利用の円滑化を図るうえで、関係者の利害をどのように調整するのが適切かということは、時代によっても、メディアや技術の発展状況によっても変わってきます。そのため、著作権法をめぐる議論は、“ワイワイ・ガヤガヤ”たえず活気に満ちていて、議論がやむことはありません。ぜひ皆さんと一緒に、エキサイティングな著作権法のこれからを考えていくことができればと思っています。
講義・演習・小クラスについて
本年度は、知財概論(井関先生と共担)、知的財産法A、C、2~4年次演習、知的財産法演習Ⅱ(院)、論文指導(院)を担当します。大講義では、具体的な事例や図表を用いたり、全体の見取り図を提示したりして、できるだけ分かりやすい授業となるように心がけたいと思います。
演習では、話題の知財訴訟(e.g. 音楽教室内での楽曲演奏に著作権使用料を支払う義務はないとして音楽教室を守る会がJASRACを訴えた事件、聖護院八ッ橋の創業年表記が品質誤認表示にあたるとして井筒八ッ橋本舗が聖護院八ッ橋総本店を訴えた事件、任天堂が“ マリカー” の公道カートレンタル事業者を訴えた事件など)を取り上げ、班ごとの報告や原告・被告・ジャッジに分かれての模擬裁判を行う予定です。