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政治学科

ウェールズのナショナリズム

教授 力久 昌幸  RIKIHISA Masayuki, Professor

専門分野 現代イギリス政治
British Politics, Territorial Politics
研究室 光塩館521
  業績リスト
List of Research Achievements
教授 力久 昌幸

私の研究

イギリスを中心にヨーロッパの現代政治に関心を持っています。

イギリスは日本のような単一国家ではなく,イングランド,スコットランド,ウェールズ,北アイルランドという四つの領域によって構成された連合国家です。歴史的には,四つの領域の中で圧倒的存在であったイングランドが,周辺のスコットランド,ウェールズ,アイルランドを併合してできた国家がイギリスだと言えるでしょう。

しかし,こうしたイギリスの形成過程は,必ずしもイングランドが周辺領域を植民地化した,というわけではありません。第一次世界大戦後にイギリスから独立したアイルランドについては,植民地支配の要素があったことを否定できないかもしれませんが,スコットランドとウェールズについては,イギリス領であることに対する反発は強くありませんでした。むしろ,19世紀から20世紀にかけて世界帝国となったイギリスの一員であることを誇りにしていたと言っても過言ではありません。また,植民地が次々と独立して帝国が失われた頃には,いわゆる「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家が確立されたことで,異なる領域において共通のイギリス・アイデンティティが持たれていました。

ところが,20世紀末以降,こうしたイギリス・アイデンティティが弱まり,各領域で独自のアイデンティティが強くなります。そうした変化を促した一つの要因は,イギリス政府によって追求された新自由主義改革の影響で,首都ロンドンをはじめとするイングランド南部が繁栄する一方,それ以外は経済的困難に直面するという地域格差の拡大でした。また,2016年に行われた国民投票で決まったブレグジット(EUからの離脱)も,残留が多数を占めたスコットランドや北アイルランドにおいて,イギリスからの分離を求めるナショナリズムの動きを強めることになりました。

ウェールズではEU国民投票においてイングランドと同様に離脱多数となりました。しかし,ブレグジットをきっかけとして,ウェールズでも分離主義ナショナリズムが拡大しているようです。ちなみに,2026年にはウェールズ議会の選挙があります。これまでウェールズでは労働党による一党優位状況が続いてきました。しかし,次のウェールズ議会選挙では,ナショナリズム政党が第一党になるという予測も出ています。2026年春学期はウェールズのカーディフ大学で在外研究する予定ですので,この機会を利用してウェールズのナショナリズムについて理解を深めたいと思います。

講義・演習・小クラスについて

講義については,「比較政治」,「近代ヨーロッパ政治史」,「現代ヨーロッパ政治史」を担当します。「比較政治」では,主としてヨーロッパ諸国の政治について,民主主義,権威主義,福祉国家,政党などを中心に比較検討を行います。「近代ヨーロッパ政治史」では,19世紀から20世紀前半にかけての近代イギリス政治を中心に,同時代のヨーロッパの政治経済状況を踏まえて概観します。「現代ヨーロッパ政治史」では,戦後のイギリス政治について検討しますが,特にブレグジットなどイギリスとヨーロッパの関係に注目します。演習では,イギリスや他のヨーロッパ諸国,そして,EUなどを中心に,ヨーロッパ政治の現状を分析します。なお,演習受講者はそれぞれゼミ論文を書くことになります。ゼミ論文の執筆は骨が折れる作業ですが,社会人になって活用できるスキルを身につけるうえで大きな意味があると思います。

プロフィール

福岡県出身です。京都大学大学院法学研究科修了後,北九州市立大学法学部を経て,2005年に同志社大学法学部の一員となりました。

さて,2026年春学期はウェールズで在外研究をします。私はこれまで留学や在外研究で,イングランド,スコットランド,アイルランドに住んだことはあるのですが,ウェールズに住むのは初めてです。イギリスの他の領域と比べてウェールズにはどのような特徴があるのでしょう。ウェールズでの在外研究が楽しみです。