以下、本文になります
政治学科
競争と協力のインド太平洋地域秩序
教授 寺田 貴 TERADA Takashi, Professor
専門分野 | 国際政治経済論・国際地域研究(アジア太平洋)
International Political Economy; Cooperation and Competition over Global Hegemony |
---|---|
研究室 | 光塩館423 |
tterada■mail.doshisha.ac.jp ※■は@に置き換えてください。 |
|
業績リスト
List of Research Achievements |
私の研究
この20年、自由主義の唱える国家間協力と、現実主義が主張する国家間競争について研究を重ねてきました。ある分野の協力や競争がなぜ「発生」したのか、それらいかに「展開」し、そしてどのような「結果」になったのかという3つの問題意識を、特に日本が位置するインド太平洋の秩序形成分析に当てはめてきました。現在は、インド太平洋の市場統合と途上国の開発を支援する開発金融について研究を進めています。前者は日本が推進したTPPやRCEP、後者は一帯一路構想やAIIBが代表的な地域制度です。私の関心は米中がこれら地域制度設立を通じた新たな経済ルール設定を巡り、互いを排し、けん制し合う形で地域戦略を展開してきた大国間競争にあります。それは軍事力直接的な軍事衝突や貿易摩擦ではなく、地域覇権を形成するための新たな支配プロセスとしての競争です。この米中競争は相互排他的で、自らの勢力圏を作るために地域協力・統合へ強く関与するなどして協力を推進してきており、例えば協力案件や統治ルールの設定は米中の意向が強く反映されるなど、その影響力の源泉と行使方法、そしてその帰結については、学術的のみならず政策研究としても重要です。その意味で、米バイデン政権が推進するインド太平洋経済枠組み(IPEF)の行方にも目が離せません。加えて一帯一路に対抗しうる『自由で開かれたインド太平洋』概念を掲げ、積極外交を展開する安倍政権の日本が、米中競争の渦の中どのような外交を展開し、地域構造や協力のあり方に影響を与えようとするのかについても、海外の研究者が高い関心を示しており、彼らとの共同研究を通じて、より客観的な視点から取り組んでいきたい課題です。業績としては『東アジアとアジア太平洋:競合する地域統合』(2013年、東京大学出版会)、最近の共編著に『インド太平洋地経学と米中覇権競争:国際政治における経済パワーの展開』2023年、彩流社)、共著に『安倍政権検証:保守とリアリズムの政治』(2022年、文藝春秋社)、 Oxford Handbook of Japanese Politics(2021,Oxford University Press)等があります。
講義・演習・小クラスについて
演習は3、4年生合同で行っています。前期は学年の垣根を取っ払い、地域統合や金融・開発、安保協力などに関してチームとして研究を進め、共同作業で論文を執筆します。
後期は学期末に提出頂くゼミ論(3年)・卒論(4年)のため、個々の研究に切磋琢磨して頂きます。合同論文作成では、前年に同様の苦労をした4年生が3年生に助言をすることも多く、同学年だけでは得られない『縦』の仲間との共闘が本ゼミの特徴です。講義は国際関係理論と現状分析のバランスを意識しながら「日本アジア関係論」(前期)、「国際機構論」(後期) を、大学院では ‘International Relations Theory in the Asia-Pacific Region’(前期)と‘Political Economy in the Asia-Pacific Region’(後期)の英語科目を担当します。