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法律学科

世界の中の日本法 現在-過去-未来 ―「日本法制史」の研究―

教授 西村 安博

専門分野 日本法制史・日本法文化論
研究室 光塩館310
  業績リスト
教授 西村 安博

私の研究

わが国は明治期に西欧近代法を継受したことにより、明治時代以前(前近代)と明治期以降(近代)との間で、法制度上の大きな断絶が生じることになった。こんにち用いることの多い「伝統」という考え方は、実のところ、わが国が近代化を遂げていく過程において、それ以前の前近代社会に関して様々なかたちで理解を与えていく中で定着して来たものといえる。

この意味において現代社会では、前近代社会に見られた様々な法制度や法現象が無条件に、この「伝統」理解の中に包み込まれてしまっている場合が多い。したがって、今日では自明のこととして理解されている事柄に関しても、その理解の実証的な根拠を問い直してみることが必要となる。と同時に、わが国の法を外側から眺め直すための視点を得ていく努力を積み重ねながら、広い意味での「日本法」(前近代法および近代法)に関する新たな理解の可能性を探っていくことが、日本法制史研究者には要請されている。簡単ではあるが、私の研究についてご紹介すれば、次の二つの方向から研究を進めているところである。

第一には、日本中世(12~ 16世紀)を主な対象とした訴訟関係文書に関する研究である。鎌倉・室町両幕府の裁判手続の実態や、さらには、そこに見られる裁判規範なるものの正体を解明するべく、幕府裁判所の作成した判決文書を基点にして実証的な姿勢から研究を進めている。第二には、法制史学における学説史および法制史学史に関する理論的研究である。

講義・演習・小クラスについて

(1)春学期に新入生を対象とする「法と社会」と3~4年次対象の「日本法史Ⅱ」を、秋学期には2~4年次対象の「日本法史Ⅰ」を開講している。いずれにしても、「日本法制史」(「日本法史」)という分野は、学生諸君にとっては馴染みの薄いものであろう。にもかかわらず、その魅力を語るとすれば、「法」に関する多様な見方や考え方、あるいは、歴史学とはちょっと違う独特の匂いをも感じながら、法律学を学ぶことの大切さをあらためて実感することが出来るのではないかと思っている。

(2)演習は、参加者が多数にはならないこともあって、極めてアットホームな雰囲気で行っている。まずは参加者の自分史を語ってもらいお互いの関心を深めてもらう。その上で各人の選んだテーマに関する報告を積み重ねていく。読む・調べる・考える・書く・伝えるなどの将来の仕事において必要不可欠な能力が確実に向上していくことは喜びである。もっとも、「よく遊び、よく学ぶ」がモットーである。関心のある諸君の参加を大いに歓迎する。

学生諸君に一言

学生時代には、自分が苦手とすることに対して積極的に挑戦していって欲しい。学生時代は要領良い処世術を学ぶ時期ではない。何事にも体当たりをして物事の本質を実感していくことが大切である。これは、私が大学教養部生だった頃、色々と相談にのって頂いたクラス担任のY教授(憲法学)から頂いた助言である。この助言は今でも大切にしている。そして何よりも、諸君がこの同志社で良き友、良き師に巡り会えることを祈っている。同志社は諸君にとって必ずや誇り高い母校になっていくことを確信している。

プロフィール

鳥取市生まれ。
鳥取西高校卒業。九州大学法学部(法律専攻)、九州大学大学院法学研究科修士課程・博士課程(基礎法学専攻)に学ぶ。法学部生のころ日本の法律を幅広くかつ深く「研究」する未知の分野として「日本法制史」に不思議な魅力を感じたのが、この道に進むきっかけになった。
近世刑事法について石塚英夫博士(石井良助博士門下)から、中世刑事法について植田信廣教授(石井紫郎教授門下)から指導を受ける。九州大学法学部助手、新潟大学法学部助教授等を経てから2003年4月、同志社大学法学部助教授に着任、2005年4月より同教授。博士(法学)(九州大学)。

趣味はG.F.ヘンデル、F.J.ハイドンやW.A.モーツァルトなどのクラシック音楽を聴くこと。Sir Thomas Beecham指揮によるハイドン交響曲がお気に入り。ときには、内田光子氏演奏によるモーツァルトのピアノ協奏曲が勇気を与えてくれる。これに加えて、鉄道小旅行をするのも楽しみの一つ。