同志社大学 法学部・法学研究科

政治学科

日本人は「勢」とどのように向き合ってきたのか

准教授 望月 詩史

准教授 望月 詩史
専門分野近代日本政治思想史
研究室光塩館307
TEL(075)251-4592
 業績リスト

私の研究

 私の専門は、近現代日本政治思想史です。元々、近代日本ジャーナリストの思想と行動に関心があり、特に石橋湛山(1884-1973年)の思想や思考様式を長年研究してきました。石橋は高校日本史の教科書で「大正デモクラシー期に「小日本主義」を唱えたジャーナリスト」と紹介されています。しかし、「小日本主義」は曖昧な概念です。そこで、石橋の思想を捉える視点として「小日本主義」から一旦離れ、思考様式に注目しました。もし興味があれば、拙著『石橋湛山の〈問い〉―日本の針路をめぐって』(法律文化社、2020年)をお読みください。
 さて、近年関心を持っているのが「大勢」や「時勢」などの「勢」概念です。例えば徳富蘇峰(1863-1957年)の時論には頻繁に「勢」が登場し、「勢」への順応を繰り返し説きます。おそらく蘇峰には、「人間には逃れられない、逆らえない運命が存在しており、それに抗するのは不可能」という感覚が存在したのでしょう。そして、この運命観が「大勢」や「時勢」などの「勢」という言葉で表現されたと考えられます。しかし、蘇峰は「勢」に対して人間が無力である、つまり「勢」に何ら働き掛けることができないとは考えていません。この点については、拙稿「徳富蘇峰の「勢」観」(『政治思想研究』第21号、2021年)で詳しく論じているので、関心のある方は是非お読みください。
 「勢」に注目して近現代日本政治思想を捉え返すと、興味深い事実が浮かび上がります。重要な政治的決断に「勢」観が影響を与えているからです。それではなぜ「勢」を重視する見方が形成されたのでしょうか。この疑問を解明するには、さらに時代を遡って「勢」観を検討する必要があります(ちなみに丸山眞男は「勢」(いきおひ)を日本思想における伝統概念の一つに挙げています)。そこで「日本人は「勢」とどのように向き合ってきたのか」という問いを明らかにするために、近世の「勢」観にも目を向け始めたところです。

講義・演習・小クラスについて

 担当科目は、「歴史・思想入門」「近代日本政治思想史」「現代日本政治思想史」「2・3・4年次演習」です。「歴史・思想入門」では、政治概念(「自由」「平等」)を取り上げます。「近代日本政治思想史」及び「現代日政治思想史」は、「政治」をめぐり日本人が何を考えてきたのかを学びます。各演習は文献の輪読が中心です。2年次演習では、近代日本政治思想の全体像を掴んでから古典を輪読します。過去に取り上げたのは、福沢諭吉『文明論之概略』、中江兆民『三酔人経綸問答』、会沢正志斎『新論』、新渡戸稲造『武士道』などです。3年次演習では、テーマを設定した上でテクストを輪読します(2021年度は戦後民主主義論)。4年次演習では、共同研究を遂行し、ゼミ論集の完成を目指します。ゼミ生の希望があれば、ゼミ旅行(2019年度は広島、2021年度は三重、愛知(番外編として原発視察))やゲスト講義も実施します。

プロフィール

 1982年山梨県甲府市生まれ。2005年同志社大学法学部政治学科卒業。2012年同志社大学大学院法学研究科政治学専攻修了。博士(政治学)。同志社大学高等研究教育機構助手、同法学部政治学科助教を経て2018年4月着任。
 趣味はランニング、(コロナを契機に夜ランが定着。ランニング足袋を愛用)、タッチフット(同志社ラグビーをこよなく愛する人達が集うチームに所属。ただしコロナの影響で練習を開催できず)、そして、NHK「みんなで筋肉体操」(お風呂を沸かしている時間を有効活用)です。「智・徳・体」の調和のとれた人間を目指して精進しています、と言いたいのですが、実際は「体」に偏重しています…。