同志社大学 法学部・法学研究科

政治学科

日本人は「勢」とどのように向き合ってきたのか

准教授 望月 詩史

准教授 望月 詩史
専門分野近代日本政治思想史
研究室光塩館307
TEL(075)251-4592
 業績リスト

私の研究

 私の専門は近代日本政治思想史です。元々近代日本ジャーナリストの思想と行動に関心があり、大学院時代から石橋湛山(1884- 1973年)の思想や思考様式を研究してきました。石橋は高校日本史の教科書で「大正デモクラシー期に「小日本主義」を唱えたジャーナリスト」と紹介されています。しかし「小日本主義」は曖昧な概念です。そこで石橋の思想を捉える視点として「小日本主義」から一旦離れ、思考様式に注目することにしました。
 さて石橋研究を進める中で、彼が国内外の情勢変化に柔軟に対応し、その時々における最良の方法を提示していたことに興味を持ちました。同時に世の中の情勢を「大勢」や「時勢」という「勢」として把握する傾向が、比較的多くのジャーナリストに見られることに気が付きました。その代表的な人物が徳富蘇峰(1863- 1957年)です。彼は「自然の大勢」や「世界の大勢」などの言葉をよく用いました。ところで蘇峰はジャーナリストであると同時に『近世日本国民史』(全百巻)を著した歴史家でもありました。実は「勢」への関心は、歴史家にも見出せます。蘇峰率いる民友社で活躍した山路愛山はその一人です。さらに遡れば、近世を代表する歴史家頼山陽の歴史観にもそれを見出せます。
 「勢」に注目して日本の近代を捉え返すと興味深い事実が浮かび上がります。重要な政治的決断に「勢」が影響を与えているからです。例えば幕末の日本が「開国」を決断した理由を「開国の御沙汰書」(明治元年1月15日)は「折柄世態大ニ一変シ、大勢誠ニ不被為得止」と表現しています。一方、日本が「大東亜戦争」の終戦を決断した理由を「終戦の詔書」(昭和20年8月15日)は「戦局必スシモ好転セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス」と述べています。戦争の終結が「大勢」という「勢」により決せられたように、その後の占領政策に伴う政治的、経済的、社会的変動も抗うことのできない「勢」と日本人に受けとめられました。
 「日本人は「勢」とどのように向き合ってきたのか」。この問いを思想史的に明らかにしようと、近代のみならず近世の「勢」観にも目を向け始めたところです。

講義・演習・小クラスについて

 今年度に担当する科目は、「政治思想入門」「近代日本政治思想史」「現代日本政治思想史」「2・3・4年次演習」です。「政治思想入門」では毎回一つの政治概念を取り上げます。「近代日本政治思想史」では明治期から昭和戦前期の論争に注目します(前年度:教育と宗教の衝突論争、天皇機関説論争、民本主義論争など)。「現代日本政治思想史」では戦後日本の保守主義を取り上げます。各演習は文献の輪読が中心です。2年次演習では近代日本政治思想の全体像を掴んでから古典に挑戦します(過去に取り上げた古典:福沢諭吉『文明論之概略』、会沢正志斎『新論』、吉田松陰『幽囚録』、新渡戸稲造『武士道』など)。3年次演習では4年次演習における共同研究の準備を兼ねて、前期に近代日本政治思想、後期に現代日本政治思想のアンソロジーや研究文献を輪読します。4年次演習ではテーマに基づき共同研究を遂行して共同研究報告書を作成します。

プロフィール

 1982年山梨県生まれ。2005年同志社大学法学部政治学科卒業。2012年同志社大学法学研究科政治学専攻修了。博士(政治学)。同志社大学高等研究教育機構助手、同法学部政治学科助教を経て2018年4月着任。
 趣味はランニング、タッチフット(同志社ラグビーをこよなく愛する人達が集うチームに所属)、そしてNHK「みんなで筋肉体操」(お風呂を沸かしている時間を有効活用)です。最近の悩みは長年の疲労が蓄積したのかあるいは衰えなのか右膝を痛めていることです。しかし、「筋肉は裏切らない」という信条の下、無理のない範囲で膝や太ももの筋肉を鍛えています。ちなみに、自分の筋肉の中で好きな部位は腹筋です。限界まで自分を追い込み、「自分に甘えなかった」と実感するときに喜びを感じます。