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政治学科

キーワードは「信頼」

教授 西澤 由隆

専門分野 投票行動・計量政治
研究室 光塩館402
TEL (075)251-3597
E-mail nishizawa■mail.doshisha.ac.jp
※■は@に置き換えてください。
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教授 西澤 由隆

私の研究

世界の民主主義諸国は、一つの大きなパズルに直面している。世界の各地で加速度的に民主化が進む中で、欧米や日本のような成熟した民主主義国ではその統治能力の危機がさけばれている。新興の民主主義諸国にしてみれば、民主化をよりいっそう進めたいのだが、自信喪失中の先進民主主義国をお手本にするわけにはいかないのである。「民主主義が健全に機能するための条件は何か」という政治学の古典的な問が、新しい疑問として今、改めて問い直されていると言える。このパズルに対して、私なりのヒントを提供するのが研究者としての課題である。

そのような立場で、市民の政治参加についてこれまでは考えてきた。民主主義の基本は、市民参加であるにもかかわらず、先進民主主義諸国での投票率が低迷している。「危機」の具体的な指標の一つである。では、政治参加のレベルを維持するために、どのような処方箋が考えられるか。私は、有権者は基本的には合理的で、政治参加がそれなりに有効であることを有権者が承知すれば、積極的にそれを利用するようになると考えている。問題は、「参加」と「政治」とのリンクを明確にすることである。

とりわけ、人間関係における「信頼」の役割について関心を寄せている。政治に積極的に関わる市民が育つには、その人たちのおかれている人間関係が「信頼」に根ざしたものでなければならないと主張する政治学者がある。政治活動の「効果」は、即効性を持つものばかりではない。つまり、自分の時間を犠牲にして政治行動を起こしても、その報いがにわかに自分に返ってくるとは限らない。そんなとき、「自分は馬鹿を見ない」と信じられるか、つまり、他人を信頼できるかどうかが鍵となる。

このようなパズルに答えるために、世論調査データを私は利用する。科学的な理論に基づいた世論調査は、有権者の「心」をかなり適切にあぶり出してくれる。政治学の多くが政治エリートを分析対象とするが、私は、有権者の「ことば」を手がかりに研究をしている。

講義・演習・小クラスについて

教室でのキーワードも「信頼」である。教師と学生が信頼関係で結ばれていることが、教育の大前提だと思う。そのために、学生一人一人との直接の対話を大切にしたいと考えている。

ゼミはもちろんのこと、講義科目でも、学生諸君が主体的に参加できる工夫を心がけている。授業は、原則、45分ぶんしか用意しない。残りは質疑応答に当てる。また、ゲームやシミュレーションも予定している。一緒に考え、一緒に授業を創っていく。大学の授業の楽しいところだ。

ゼミ生の一言

西澤ゼミでは、政治事象に対する「知の発掘」、「分析」、「知の共有」の三つを活動の軸としている。

まず、「知の発掘」とは、文献・先行研究を読むことやフィールドワークなどを行うことである。この過程で、ゼミ生は自身が心踊る政治事象を見つけ、「なぜその事象は生じているのか」という「問い」を元にパズルを組む。

そして、「分析」の過程では「知の発掘」で得られたパズルを、社会調査データと統計ソフトR を用いて実証する。この過程により自身のパズルの科学的な確からしさを得ることができる。

最後に、「知の共有」とは、これまでの過程で得られた知識をゼミ生と先生に「伝える」過程である。知識を「伝える」ためには、その知識に対する深い理解が求められる。また、効果的に「伝える」ためには文章やプレゼンテーションの研鑽が求められる。

これらの過程を通して、我々は普段の学習を超えた、「知の探究」に到達することができる。

以上のように、「知の探究」の過程はハードワークのように思われるかもしれない。しかし、学生にとことん付き合う西澤先生の人柄と、ゼミ生間の結束力が可能としている。

「知の探究」の旅に興味がある学生に対して西澤ゼミの門戸はいつでも開かれている。

(3 回生 田中勇成)

プロフィール

同志社大学・法学部を卒業(1981)してから、エール大学の大学院(政治学)で学ぶ(1981-88)。帰国後、明治学院大学に就職し、政治心理学などを担当(89-97)。そして、1997年に同志社大学に入社。趣味はフルートと写真撮影。