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政治学科

連合国家イギリスの行方

教授 力久 昌幸

専門分野 現代イギリス政治
研究室 光塩館521
TEL (075)251-3315
  業績リスト
教授 力久 昌幸

私の研究

イギリスとアイルランドを中心として,ヨーロッパの現代政治に関心を持っています。

さて,みなさんはイギリスという国の正式名称を知っていますか。イギリスの正式国名はグレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)という非常に長いものとなっています。この名称が表しているように,イギリスは日本のような単一国家ではなく,イングランド,スコットランド,ウェールズ,北アイルランドという四つの領域によって構成された連合国家であるとされています。

ちなみに,イギリスは日本と同じように長い歴史を持つ国だと思う人もいるかもしれませんが,厳密に言うと連合国家としてのイギリスの歴史はたかだか300年ほどです。その意味では,イギリスはアメリカ合衆国とそれほど変わらない若い国家であると言うことができるわけです。

それでは,なぜ私たちはイギリスが長い歴史を持っていると思い込んでしまうのでしょう。それは,連合国家としてのイギリスが誕生する以前に,1000年近い歴史を持つイングランド王国が存在していたからです。しかしながら,イングランドがイギリスというわけではありません。イギリスにはイングランド以外に,スコットランド,ウェールズ,北アイルランドという別の領域が存在するからです。

日本がいわゆる大和朝廷を中心とする国家統一によって成立したように,イギリスもイングランド王国が周辺の領域を併合することによって成立したのですが,単一国家となった日本と異なる連合国家イギリスの特徴は,イングランド以外の諸領域に対して一定の自律性を認め,また領域ごとに異なるナショナル・アイデンティティが存在することです。

こうしたイギリスの特徴的な国のあり方は,2016年の国民投票で決まったブレグジット(EUからの離脱)によって大きく動揺することになりました。スコットランドでは分離独立の動きが強まり,北アイルランドでは南北アイルランド統一の動きが目立つようになりました。さらに,これまで連合国家の一員であることに満足していたはずのウェールズでさえ,分離独立の是非について議論が見られるようになっています。

連合国家イギリスが今後も存続することができるのか,それとも各領域が独自の道を歩んで国家解体の日を迎えることになるのか,注目して見ていきたいと思っています。

講義・演習・小クラスについて

講義については,「比較政治」,「近代ヨーロッパ政治史」,「現代ヨーロッパ政治史」を担当します。「比較政治」では,主としてヨーロッパ諸国の政治について政党を中心に比較検討を行います。「近代ヨーロッパ政治史」では,19世紀から20世紀前半にかけての近代イギリス政治を中心に,同時代のヨーロッパの政治経済状況を踏まえて概観します。「現代ヨーロッパ政治史」では,戦後のイギリス政治について検討しますが,特にブレグジットなどイギリスとヨーロッパの関係に注目します。

演習では,イギリスや他のヨーロッパ諸国,そして,EUなどを中心に,ヨーロッパ政治の現状を分析します。なお,演習受講者にはそれぞれゼミ論文を書いてもらいます。ゼミ論文の執筆は骨が折れる作業ですが,社会人になって活用できる論理的思考力を身につけるうえで大きな意味があると思います。

プロフィール

福岡県出身です。
京都大学大学院法学研究科修了後,北九州市立大学法学部を経て,2005年に同志社大学法学部の一員となりました。さて,イギリスの現代政治を専門としていることに影響されているのかもしれませんが,日系イギリス人でノーベル文学賞作家,カズオ・イシグロの小説を好んで読んでいます。最新作の『クララとお日さま』もよかったのですが,今のところ一番好きな小説は『私を離さないで』です。クローン人間の生と死を描いた悲しい物語なのですが,カズオ・イシグロの抑制された文体によって,とても味わい深い小説になっています。ちなみに,『私を離さないで』は映画化されていて,そちらも素晴らしい映画だと思います。