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歴史・思想コース/教員と学生の対談

歴史・思想コース対談

森 靖夫 (専門分野)日本政治史・東アジア国際政治史
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ゼミ生(4年次生)

過去の政治現象を史料から探り、これからの政治を展望する。

教員:
このコースで学ぶようになって、「歴史」や「思想」の捉え方は変わりましたか?

ゼミ生:
大きく変わりましたね。高校までの授業のイメージでは、歴史も思想も、過去のもので評価が定まってしまったもの、あるいは暗記するものという印象がありましたが、今では、現代につながるものであり、現代までの大きな流れを読み取るものとして理解しています。

教員:
そうですね。過去と切り離されて生きている人がいないように、現代における政治にも歴史と深い結び付きがあります。大学で学ぶのは、歴史を一点の過去の出来事として扱うのではなくて、現代につながる線や面として読み解くことにありますね。そのためには史料収集・解読だけでなく、解釈が重要になります。

ゼミ生:
確かに先生は、史料の講読をする際に、「行間を読むように」と、繰り返し言われていますね。

教員:
政治が人によって行われるものである以上、そこで行われる決定には、当事者たちの意思が必ず反映されます。だから政治を営む「人間」について学ばなければならないのです。政治家の日記を分析する場合、なぜこのような書き方をしているのか、なぜあんな大事なことを書いていないのか、というようなことも重要な情報になります。

ゼミ生:
日記を研究の対象として扱うのが、とても新鮮でした。正直、はじめは戸惑いもありました。ここから何を読み取ることができるのだろうって。

教員:
いまゼミの授業で扱っている『芦田均日記』は、芦田均(1887~1959)が第一高等学校在学中から亡くなるまで書き続けられたもので、東京帝国大学卒業後、外務省入省、衆議院議員、内閣総理大臣、そして退任した後の活動が綴られています。戦前から戦後にかけての日本政治史を理解する上で、重要な史料ですね。

ゼミ生:
当時の政治現象の基本的事実からだけでは見えてこなかったことが、芦田均という個人の内面や動向から捉え直すことで浮かび上がってくるように感じます。

教員:
近代日本は大きな変革を二度経験しています。明治維新と太平洋戦争(敗戦)です。この二つの出来事が、現代の日本政治に大きな影響を与えていることは間違いありません。もっと直接的に言えば、これらの経験は今後の日本の政治に警鐘を鳴らすものであると思います。当時の政治家たちが、激動の時代にどのような選択をとり、なぜ乗り切ることができたのか、あるいは乗り切ることができなかったのかについて考察を深めることは、変動を迎えつつある私たちにとって少なからず意義があるはずです。

ゼミ生:
歴史や思想を学ぶということは、現代の私たちの政治がどうあるべきか、そして、将来、どこに向かって進むべきかを見渡すことにもなりますね。

教員:
そうですね。でもそのためには、地道な作業も必要です。まず、ある政治的判断や選択の根拠を探るために、出来るだけ多くの史料を収集する。そして集めた情報を吟味し、客観的に解釈する。また、すでにある解釈が正しいかどうかを再検討しなければならない。歴史と思想へのアプローチは地道で終わりのない営みですが、より説得力があると思える解釈を導きだすことが学問的役割だと思いますし、みなさんにとっても歴史や思想を学ぶことの意味は大きいと思います。